原産地証明とその判定基準

原産地証明書は、輸出する貨物がどこの国を原産とするかといういわば貨物の国籍を証明するものである。貨物の製造過程ではさまざまな部品や材料が使われ、すべての生産が一つの国で行われていれば完全生産品として当該国が原産地となる。一方、2ヵ国以上が関与する場合には、どの国が原産地となるのかについて定めたルールが必要となる。非原産材料を用いて生産される産品の原産地判定基準として実質的変更基準が用いられ、その実質的変更には、付加価値基準、関税分類変更基準、加工工程基準がある。どの基準を用いるかは各協定により品目ごとに定められている。
日本からの輸出品に関する原産地証明書には、「非特恵の原産地証明書」と経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)を締結した協定締約国向け「特定原産地証明書」がある。非特恵の原産地規則は関税法、経済連携協定の原産地規則は各協定により定められている。


非特恵の原産地規則

このうち、非特恵原産地規則は、WTO原産地規則協定を参考にして、各国がそれぞれ策定。日本においては、関税法施行令第4条の2第1項、第4項、関税法施行規則第1条の6、第1条の7、関税法基本通達68ー3ー5に輸入申告において申告する貨物の原産地規則を定めている。輸出の際にも同規定が準用される。非特恵原産地証明書は、WTO協定税率、便益関税 、アンチ・ダンピング税の適用、原産地表示 、輸入統計の作成等を目的として利用される。関税法施行令第4条の2第4項において原産地とは、

  1. 一の国又は地域において完全に生産された物品として財務省令で定める物品
  1. 一の国又は地域において、前号に掲げる物品以外の物品をその原料又は材料の全部又は一部としてこれに実質的な変更を加えるものとして財務省令で定める加工又は製造により生産された物品


完全に生産された物品として財務省令で定める物品は、関税法施行規則第1条の6外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに定めている。実質的な変更を加える加工または製造の指定は、同第1条の7に定められ、物品の該当する関税分類番号の項(HS4ケタ)がすべての原料または材料に該当する項(HS4ケタ)と異なることとなる加工または製造とされている。さらに関税法基本通達68-3-5においては特定物品における加工工程基準および実質的な変更にあたらない例を挙げている。輸送や保存のための操作、単なる切断、選別、包装、仕分け、ラベルの貼り付け等は実質的な変更を加えるとは認められない。
非特恵の原産地証明書は主として輸入国の法律・規則に基づく要請、契約や信用状で指定がある際に取得するものである。非特恵原産地証明書は日本各地の商工会議所が発行。


経済連携協定の特定原産地証明書

経済連携協定における原産地規則および原産地証明書の作成方法はそれぞれの協定によって定められている。

  1. 第三者証明制度
    輸出者が第三者機関(政府または指定機関)に対して、輸出商品が原産地規則を満たしていることを証明する情報を提供し、第三者機関が当該製品の原産性を判定し、特定原産地証明書を発給する制度。日本・マレーシア、日本・タイ、日本・チリ、日本・インドネシア、日本・ブルネイ、日本ASEAN(AJCEP)、日本・フィリピン、日本・ベトナム、日本・モンゴル、日本・インドの経済連携協定で用いられている。日本商工会議所が経済産業省より発給機関と指定されている。国内26か所にある日本商工会議所の事務所が発給。なお、日本・シンガポール協定によるシンガポール向けの特定原産地証明書は国内131か所の商工会議所が指定発給機関とされている。
  2. 認定輸出者制度
    政府又は指定された第三者機関によって認定された輸出者に対し、自己証明制度より簡単な申請方法を適用する制度。認定輸出者以外に対しては、第三者機関による判定が必要。日本・メキシコ、日本・スイス、日本・ペルーの協定、2022年1月に発効したRCEPで用いられている。
  3. 自己証明制度
    輸出者(場合によっては輸入者や生産者も含まれる)が、自らの責任で原産性を証明する制度。TPP11、日EU・EPA、日英EPAで用いられている。日豪EPAでは、第三者証明制度も利用可能。日米貿易協定においては、輸入者のみ自己申告が可能。RCEPについては、現時点で制度が利用可能な締約国は日本、オーストラリア、ニュージーランドに限られているが、 その他の署名国については、RCEP 協定発効後 10 年以内(カンボジア、ラオス、ミャンマーは RCEP 協定発 効後 20 年以内)に導入される予定。

2022年8月19日 掲載