インコタームズ

「インコタームズ(Incoterms)」とは、国際商業会議所(ICC)が制定した貿易取引条件とその解釈に関する国際規則(International Commercial Terms)の略語。インコタームズが制定される以前は、貿易取引条件の解釈がそれぞれの国で異なり、しばしばトラブルの原因となっていた。

制定後は、商慣習の変化に伴って数次の改定を経て、現在は「インコタームズ2020」が出されている。インコタームズは、アルファベット三文字(例えば、CIF、FOBなど)で表され、売主・買主間(当事者間)の物品の引渡しに関する危険の移転の分岐点、役割や費用(運送の手配と運賃の支払、保険の手配と保険料の支払、通関手続きと費用の負担など)について、それらに関する基本的な条件を定めている。ただし、支払われるべき代金や支払方法、物品の所有権の移転時点、契約違反の結果などについては定めていない。

「インコタームズ2020」では、インコタームズ2010と同様、「いかなる輸送手段にも適した規則」と「海上および内陸水路輸送のための規則」の2クラスに分類し、全部で11規則ある。インコタームズ2010では、2000年版のDグループにあった4条件が廃止され、新たに2つの規則(DAT、DAP)を加えた合計11の規則で構成されていた。インコタームズ2020では、インコタームズ2010にあったDATが消滅し、これに代わってDPUが新設された。



国際輸出管理レジーム

東西冷戦終結後、世界では民族紛争や宗教紛争、テロ行為等が増加し、それを助長する兵器・武器の拡散は世界の主要課題の一つとなっている。世界の主要国では、大量破壊兵器や通常兵器、それらへの転用可能な貨物・技術が、国際社会の安全性を脅かす国家やテロリスト等、懸念活動を行うおそれのある者に渡ることを防ぐため、先進国を中心として、東西冷戦以前より国際的な枠組みを作り、国際社会と協調して輸出等の管理を行っている。この枠組みは、以下の4つにより成り立っている。(詳細は、それぞれのURLを参照下さい。ワッセナー・アレンジメントについては、別項に解説あり)

●原子力供給国グループ (NSG)→核兵器関連・1974年設立
原子力供給国グループ(NSG)の概要|外務省 (mofa.go.jp)
●オーストラリア・グループ (AG)→化学・生物兵器関連・1985年設立
オーストラリア・グループ(AG:Australia Group)の概要|外務省 (mofa.go.jp)
●ミサイル技術管理レジーム (MTCR)→ミサイル関連・1987年設立
ミサイル技術管理レジーム|外務省 (mofa.go.jp)
●ワッセナー・アレンジメント (WA)→通常兵器関連・1996年設立
通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理に関するワッセナー・アレンジメント|外務省 (mofa.go.jp)

※国際輸出管理レジーム参加国については、以下を参照下さい。
国際輸出管理レジーム参加国一覧表|外務省 (mofa.go.jp)



日本の安全保障貿易管理体制(リスト規制とキャッチオール規制)

日本における安全保障貿易管理制度は、別項で解説の国際輸出管理レジームでの合意を受けて、法律である「外国為替及び外国貿易法(外為法)」第 25 条、第 48 条、政令である「輸出貿易管理令」・「外国為替令」等に基づいて実施されている。法律や政令による規制方法には、特定の貨物や技術に関する「リスト規制」と、主に需要者と用途に関する「キャッチオール規制(補完的輸出規制)」の2つの制度がある。

このうちリスト規制とは、国際輸出管理レジームで合意された、(a) 通常兵器やその技術、(b) 軍事用途にも転用可能な高度の汎用品(貨物・技術)を規制するもので、全世界を対象としている。貨物については、輸出貿易管理令の別表第1の1の項から15の項の品目が、技術(プログラムを含む)については、外国為替令の別表1の項から15の項に記載されているものが、規制対象になる。技術仕様(スペック)は貨物等省令(「輸出貿易管理令別表第1及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令」)に規定され、該当するものは必ず、経済産業大臣の「輸出許可」が必要となる。

一方キャッチオール規制とは、リスト規制品目以外で、大量破壊兵器等の開発等および通常兵器の開発等に使用されるおそれのあるもの(ただし、食料品や木材等の一部品目を除く)を規制し、輸出貿易管理令別表3に掲げる国・地域(国際輸出管理レジームに参加し、かつ輸出管理を厳格に実施している26カ国)*を除く全地域が対象となる。品目の用途や需要者客観要件および経済産業省から通知を受けた場合のインフォーム要件に該当する場合に経済産業大臣の輸出許可が必要になる。また、輸出貿易管理令の別表3の2*では、国連安全保障理事会決議において武器禁輸等に関する制裁措置の決議が採択された地域を仕向地とする場合において、他の地域と比べ厳格な輸出管理を行うと定めている。

*輸出貿易管理令別表3に掲げる国・地域
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、韓国、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国

*輸出貿易管理令別表3の2に掲げる国・地域
アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、南スーダン、スーダン

※詳細は以下のホームページを参照下さい。
||METI||安全保障貿易管理**Export Control***
輸出管理の基礎 | 安全保障貿易情報センター (CISTEC)



ワッセナー・アレンジメント

冷戦の終結に伴い、地域及び国際社会の安全と安定を損なうおそれのある通常兵器及び関連汎用品・技術の過度の移転と蓄積の防止という課題に関し、東西の区別を越えた輸出管理体制を設立する必要性が強く認識され、ココム(対共産圏輸出統制委員会:旧共産圏諸国に対する戦略物資統制のための枠組み)参加国を中心に協議を開始。1994年3月末にココムが解消されたことを踏まえ、1995年12月、新たな輸出管理体制の設立について関係国間で政治的な申合せが行われ、1996年7月の設立総会をもって正式に「ワッセナー・アレンジメント(The Wassenaar Arrangement on Export Controls for Conventional Arms and Dual-Use Goods and Technologies / WA)」が発足。通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の移転に関する透明性の増大及びより責任ある管理を実現し、それらの過度の蓄積を防止することにより、地域及び国際社会の安全と安定に寄与すること、及びグローバルなテロとの闘いの一環として、テロリスト・グループ等による通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の取得を防止する目的で設立。

2021年6月現在、42か国が参加。事務局はウィーンに設置されており、全ての重要事項は、年1回開催される総会において決定される。総会の議長は各国の持ち回り。一般作業部会は、主に政治的事項の協議及び情報交換を目的として年2回開催される。一方、専門家会合は規制リストの見直しのために年2回開催される。

WAは、法的拘束力を有する国際約束に基づく枠組みではなく、通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の供給能力を有し、かつ不拡散のために努力する意志を有する参加国による紳士的な申合せとして存在。ココムがその対象地域を共産圏に限定していたのに対し、WAは特定の対象国・地域に的を絞ることなく、全ての国家・地域及びテロリスト等の非国家主体を対象としている。

WAの活動の一つに輸出管理がある。参加国は、通常兵器及び関連汎用品・技術に関してWAで合意されたリストに掲載された品目について、国内法令(我が国においては、外国為替及び外国貿易法、輸出貿易管理令、外国為替管理令等)に基づき、輸出管理を実施。このほか、参加国は、通常兵器及び関連汎用品・技術の移転に関する透明性を高めるため、通常兵器の移転や汎用品・技術等の情報を参加国間において通報している。

詳細については、以下のURLを参照ください。

Home – The Wassenaar Arrangement




保税地域/保税展示場

保税地域とは、外国貨物の保管・加工・製造・展示などができる場所のことで、輸出入する際に貨物を留置きする場所を指す。税関当局の管轄下にあり、関税法第30条で「外国貨物は原則として保税地域以外に置くことはできない」と定められていいる。保税地域外で輸出入申告するには特別な許可が必要となる。保税地域には指定保税地域(一時仮置き場所)、保税蔵置場(長期保管が可能)、保税工場、保税展示場、総合保税地域などがある。

このうち保税展示場とは、外国から本邦へ到着した貨物を展示する会場として、税関長が許可した場所を言う。この制度は、公的機関が行う外国商品の展示会や、国際的な規模で行われる博覧会などの運営を円滑にするために、関税などを課さないままで、簡易な手続により展示したり、使用する場所として設けられる。基本は展示会ごとに主催者が保税展示場として申請するが、愛知県常滑市にある愛知国際会議展示場(Aichi Aky Expo)は日本で唯一の常設の保税展示場となっている。同展示場の詳細は、以下を参照。

Why Aichi Sky Expo – AichiSkyExpo(愛知県国際展示場)